思い通りのパッケージをつくるために——依頼前に伝えておきたい5つのこと

2025.05
28

パッケージデザインの仕事をしていると、何度か出会う場面があります。それは、お客様からのこんなひと言。

「悪くないんだけど……なんか思ってたのと違うんだよね。」

この“ちょっとしたズレ”は、初期の情報共有でもう少し深くすり合わせができていれば防げたかもしれない——そう感じることが少なくありません。

デザインは、「見た目」だけでなく、「情報の受け渡し」で大きく変わります。
ここでは、パッケージづくりをスムーズに、そして理想に近づけるために、最初に伝えておきたい5つのポイントを、事例を交えてご紹介します。


1. 商品の「核」を共有しよう

まず大切なのは、「この商品がどういうものか」をできるだけ正確に伝えること。
商品名や容量、価格といった基本的なスペックはもちろん、「この商品で伝えたいこと」や「他にはない特長」「守りたいこだわり」なども、ぜひお聞かせください。

それらは、デザイナーにとって“軸”となる情報です。情報がクリアであるほど、ブレのない提案が可能になります。

安心感をデザインに込めた米粉クッキー
ある米農家さんからのご依頼で、「米粉を使った、アレルゲンフリーのクッキー」のパッケージを制作しました。
「子どもにも安心して食べてほしい」「素材のやさしさを伝えたい」という想いを伺い、クラフト紙風の質感や淡い配色、素朴なタッチのイラストを用いてデザイン。
結果、店頭でもナチュラル志向の方にしっかり届き、「パッケージがやさしいから手に取った」という声も届いたそうです。


2. 届けたい相手をイメージしてみよう

パッケージは“誰に向けて作るのか”によって、その佇まいが大きく変わります。
年齢、性別、ライフスタイル……細かく絞れなくても、「30〜40代の女性に人気がありそう」「年配の方でも読みやすくしたい」といったイメージでも十分です。

親しみを加えたことで売り場で立ち止まる人が増えた
「地元の若い人にももっと買ってほしい」と話してくれたのは、とある農園の方。
元々のラベルは少し堅実で、昔ながらの安心感はあるものの若年層にはやや地味な印象でした。
筆タッチのイラストと親しみのある書体に変えたところ、直売所での反応が明らかに変化。「かわいい!」「SNSに載せたい」と言ってもらえるようになりました。


3. 商品が「どこに並ぶか」も伝えよう

パッケージは、それを見る「場所」や「シチュエーション」によって効果的な設計が変わります。
たとえばスーパーなら“遠目で目立つ”ことが重要。観光地なら“贈りたくなる特別感”が大切になる場合も。

土産店の棚で輝く梅干しパッケージ
紀州の梅干しを扱うお店から、「観光客向けに、お土産として手に取りやすいものにしたい」とご相談がありました。
既存のラベルでは陳列棚に埋もれてしまっていたため、白を基調にした紙箱に金箔風のあしらいと、手触りのある和紙素材を使用。
特別な贈り物としての存在感を放ち、観光シーズンには定番商品として人気を集めています。


4. デザインの“イメージ”も言葉にしよう

「高級感のある感じで」「ナチュラルでかわいい方向で」など、ざっくりとしたご希望でも、デザインの方向性を考える手がかりになります。
とはいえ、抽象的な言葉は人によって受け取り方が異なります。
「この雰囲気が好き」「これはちょっと違うかも」といったビジュアルの共有があると、すり合わせが格段にスムーズになります。

画像一枚が伝えた“大人かわいい”のニュアンス
「かわいらしさがほしい、でも子どもっぽくはしたくない」という微妙なニュアンス。
参考にと送っていただいたのは、くすみ系のパステルカラーと手描き文字のパッケージ画像でした。
そこから配色や文字組みのニュアンスを抽出し、落ち着いた中にも愛らしさのある仕上がりに。初回提案で「まさにこれです」とご満足いただけました。


5. スケジュールと予算も、最初に伝えてOKです

限られた時間やコストの中でも、できることはたくさんあります。
むしろ、スケジュールやご予算を先に伺うことで、その中で最大限の効果が出る方法をご提案できます。遠慮なくお伝えください。

イベントまで残り1週間。即断即決で間に合ったラベル制作
ある食品イベントに急遽出展が決まり、「どうしてもこの日までに間に合わせたい」というご相談。
既存のパッケージ構成を活かしつつ、印象を損なわないラベル案をスピード提案。
印刷スケジュールの調整も即応し、納期ギリギリで無事納品。イベントでは「急ぎでも妥協がなかった」と喜んでいただけました。


「伝えること」は、デザインの第一歩

パッケージづくりは、依頼者とデザイナーが一緒に取り組む“対話”のプロセスです。
どれだけ素晴らしい商品でも、伝える情報が足りなければ、その魅力が伝わりきらないこともあります。

大切なのは、「思い通り」のパッケージではなく、「想像以上」のパッケージを目指すこと。
そのために、今回ご紹介した5つの視点が、良いスタートラインとなれば幸いです。

May 29, 2025
Writing G
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